8.エンタープライズを買って作ったよE

結局「エンタープライズE」のプラモデルを買った。
欲しいなーと思いながら、それでもいろいろな条件を考慮すると、買う決心がつかないまま、それでも発売日近くにはおもちゃ屋をうろちょろして、何度目かのうろちょろで発見した時には即座に箱を抱えてレジへ走った。いや、小走り、いや、早足程度だったかも。いや、落ち着こうとしてあえてゆっくり歩いていたかもしれない。覚えてない。

しかし、早く買おうと、ゆっくり買おうと、すぐには作れないことは覚悟していた。
我が家にはロミュランよりもボーグよりも手ごわい、「伝い歩きを始めた乳幼児」がいるのだ。
前回のエンタープライズ製作時には「寝たきり乳幼児」だったため、私の敵ではなかったが、今回は強敵だ。何か変わった物を見つけると、怪光線を発射しそうなほど目をキラキラさせ、「ばっばっばっばっ」と吼えながら突進してくるのだ。組み立て中のエンタープライズなどあっという間に破壊されてしまうだろう。
あの怪じゅ、いや、娘のいないところでなければ製作は不可能だ。
不可能だ。
不可能だ。
不可能だ。

と思っているうちに何週間も過ぎてしまった。
エンタープライズは手つかずのまま放置されている。
一度、娘のお昼寝中に製作を開始しようとしたが、そんな時に限ってすぐに目覚めてしまい、取り掛かれなかった。時々ふたを開けて、ビニールの上から部品をなでてみたりする。宇宙の彼方から「早く作ってよー」という声が聞こえてきた。
気がした。


 箱を眺めているだけで何週間も過ぎてしまった。


 これが今回の部品たち。

そんなある日、妻が娘を連れて出かけることになった。
娘を抱いた妻を「いってらっしゃーい」と、にこやかに見送り、玄関のドアが閉まりきらないうちにドカカカカッと二階に駆け上がり、プラモの箱を抱えてまたドカカカカッと駆け下りる。急ぐ余り、足の小指を柱にぶつけて一瞬うずくまったが、すぐに体勢を立て直し、コタツの上にある新聞やらなんやらを払い落とす。

さて。
与えられた時間は4時間から5時間というところ。完成は無理でも、前回の経験から、ある程度形になるところまでは行けると見た。
実際組み立て始めると、前回の経験もあってか、思っていたよりすいすい進んだ。形もE型のほうが少し単純で、プラモ自体も組み立てやすくなっているように感じた。
円盤部も部品がかなり少ないし、台座なんか前と同じだ。簡単簡単。
ところどころはめ込むのがややきついところがあったが、がんばって突っ込んだ。
後で他の工程で作ったパーツと組むまではポロリと取れてしまう部品があって、それは要注意だったが、作業は順調に進み、ほぼ形が出来上がっていった。
行ける!これなら娘が帰って来るまでに完成できる!

ところが。
船体のお尻のところに、シャトルの出入り口のシャッターにあたる、ほんの1センチ余りの部品があった。小さいけれど、船体のいくつかの部品をたばねる大事な役目を果たすようになっている。
これが。
この1センチ余りが。
どうにもはまらない。
例によって爪が痛くなるほど両手で押してみたがだめだった。
船体の他の部品がきっちりはまっていないのが原因なのだが、船体を組み立てている途中で「ちょっとゆがんでるけどあとでまとめる部品があるだろうからいいや」と放置していたのだ。因果応報、自業自得だ。
早くしないと娘が帰って来てしまう。
別に今日完成させなくてもいいのだが、一度、今日中にできるかも、と思ってしまったので、もうすっかりその気である。これさえはまればあとは台座にセットするだけなので余計くやしい。
こうなったらあれだ。
もうあの作戦しかない。
「はまらないなら削っちゃえ作戦」
カッターナイフの先で凸部をカリッカリッと削っては合わせ、削っては合わせする。
ようやくカッチリはまり、台座にセットして完成!


見よ!この勇姿。なんと今回は半日足らずで完成!
と、思ったら…

ご満悦でへらへら眺めていたら妻と娘が帰ってきた。
「どーよ」
「ああ、まだ作ってなかったんだ」
って、おい。
「ばっばっばっばっ」
娘が突進してきた。
「これはだーめーよー」
娘の魔の手から守るためにエンタープライズを持って立ち上がった。
「あ痛てて」
何かが足の裏に。
これは?あれ?
あぎゃっ!
部品じゃん。
なんとあの、途中で取れやすいから要注意、と思った部品が足の裏に貼りついていた。

脱落した部品

ここにはまる

せっかく完成したと思ったのに…
しかし今日は、もう一度これをはめ直す気力は残っていない。
明日にしよう。

翌日。
幸い、脱落した部品は、例の削ってはめ込んだ部品に触れずに組み込めることがわかりひと安心。マイナスドライバーのちっちゃいやつでキコキコやっていくつかの部品をはずし、脱落部品をセットして、元に戻す。
今度こそ完成!


脱落部品も無事に設置


真上より。
E型の円盤部はだ円形なのだ。


夢の共演。テレビや映画では見られない光景なのだ。

いろいろ調べていたら次は「エンタープライズNX-01」がプラモで出るんだって。
ふーん。
飛んでるとこ見たこと無いのでまったく心が動かない。
最初のテレビシリーズのか、D型が出ないかなぁ。

って、出たら買うのか?
買いそうだ。
乗りかかった船だ、とか言っとくか。宇宙船だし。

2003.11.22 GOBDASHA


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