3.トレックって?

 そんなこんなで私とスタートレックの関係は始まった。というか始まらなかった。
「宇宙大作戦」をテレビ番組として意識して見るようになったのは中学三年生になってからだった。
それまでにアニメ「宇宙戦艦ヤマト」を夢中で見たり、SF小説を意識して読むようになったりして、徐々にSFファンになっていった時期だった。
「スターウォーズ」という映画がすごいらしい、という話を耳にしたのもそのころだったと記憶している。例によって確かではないが。

「スターウォーズ」の写真を初めて目にしたのは水野晴郎が解説しているテレビの映画劇場で、「スターウォーズ」ブームに便乗して昔のSF映画、「宇宙水爆戦」かなんかを放送した時で、解説する晴郎のバックに一枚だけXウィングファイターの写真が映っていた。
晴郎は、「スターウォーズというSF映画」がアメリカで大ヒットしていて、SFがちょっとしたブームになっているから今日の映画も見ておいたほうがいいよ、というような話をしていたが、「スターウォーズ」の内容に関してはほとんど触れず、後ろの写真も何の写真なのか教えてくれなかった。
晴郎自身よく知らなかったんじゃないかとにらんでいる。

晴郎も知らないかもしれないが、こっちはもっと知らない。私には晴郎の後ろに映っている写真が、変わった形のロボットに見えた。Xウィングの4枚の翼が手足のように見えたのだ。
そしてその変わった形のロボットがガッチャンコガッチャンコ歩く姿を勝手に想像して、「なんだか面白そー」と思ったのを覚えている。
今考えれば、なぜそんなふうに見えたのか不思議だが、テレビの画面が小さかったのと、「スター」はともかく、「ウォーズ」という言葉の意味すら知らなかった当時の私のことなので勘弁してほしい。

「スター」はともかくと言えば、「宇宙大作戦」の原題が「STAR TREK」だということもそのころ覚えた。そのことを私に教えてくれたというか、意識させたのはエンサンという同級生だった。
エンサンはキャロルとか矢沢永吉が好きな、牛乳屋の倅で、部屋には「なめ猫」のゴミ箱があった。
キャロル、矢沢永吉、牛乳、なめ猫、そしてスタートレック。
意味は無いが並べてみた。ちょっと変わった組み合わせなので。
なかなかスタートレック自体の話にならなくて申し訳ない。
と、ここらで一発あやまっとくか。

エンサンは「宇宙大作戦」とは決して言わず、いつも「スタートレックスタートレック」と呼んでいた。
私も徐々にそう呼ぶようになっていった。原題で呼ぶほうが、「よりファン」という雰囲気をかもし出せるからだ。
しかしホントは知らなかった。
「スター」はともかく「トレック」って?

今でこそ「渋い山歩き」や、「やや難度の高いハイキング」のことを「トレッキング」なぞと言ったりするが、当時はそんな言葉は流通していなかった。「トレック」って?
少し後になってある雑誌で、「TREK」というのは、あまりはっきりした目的を持たずに旅をする、というような意味なので、「STAR TREK」は直訳すれば「宇宙のぶらぶら旅行」というような意味になる、と書いてあるのを読んだ。
ふーん。と思ったものだ。もっとかっこいい意味があるのかと思っていた。
ぶらぶら旅行って。
しかしそう言われてみればエンタープライズは、どこを何のために飛行しているのかよくわからなかったな。注意深く見ていればわかったのかもしれないが、たとえば「宇宙戦艦ヤマト」のように「放射能除去装置が欲しいばっかりにイスカンダルへ一直線!」というのに比べればぶらぶら感は否めないな。

「TREK」の意味を知ってから見ると、いくらミスタースポックが論理的なことを言っても、いくらカーク船長が美人のゲストキャラとロマンチックな雰囲気になっても、「ああ、こいつらぶらぶらしてんだなぁ」と思うようになってしまった。

2003.4.11 GOBDASHA


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